診療科・各部門のご案内

「これって頭かな?」と思ったらどんなことでもご相談ください。

脳の疾患は、意外にわかりづらく不安だけが強くなります。
 
つらい頭痛
顔面の痛みやけいれん
めまい・ふらつき
しびれ
ふるえ
手足が動かしづらい
以前より歩けなくなった
脚がおぼつかず転びそうになる
ろれつが回らない
 
など、脳の病気が心配になったら当院はいつでも紹介状なく受診いただけますのでお気軽にご相談ください。CT検査を行っており、診断上必要があればMRI検査も対応しております。
 
 脳神経外科一般として、脳血管疾患、頭部外傷、機能的脳神経外科(正常圧水頭症、三叉神経痛、顔面けいれん等)、脳腫瘍など幅広く診療しております。
 
 特に下記の治療に力を入れています。
 

  • 高齢者の特発性正常圧水頭症(歩行障害、排尿障害、認知症)については、合併症の少ない手術を目指し多くの症例経験を積んだ医師が取り組んでおります。
  • 顔面けいれん、三叉神経痛についての相談、保存的治療から根治を目指した微小血管減圧術まで対応いたします。
  • 脳卒中の予防的治療(未破裂脳動脈瘤、閉塞性脳血管障害)については、保存的にも手術的にも患者様にとって最も適切な対処法を提案いたします。

急性期治療から回復期リハビリテーションまでの一貫した入院治療体制

当院は、急性期治療や外科的治療の後、担当した主治医が引き続き急性期から回復期までのリハビリテーションを継続して行ってまいります。
回復期病床のない急性期病院では、急性期治療終了後、回復期病院へ転院するまでに数週間から1か月の待機期間が生じてしまいますが、当院は体力が落ちないよう早期から継続して有効な回復期リハビリテーションに以降することでより高いゴールをめざします。
急性期病院からの脳卒中回復期リハビリテーションのための転入院の受入も滞らぬよう随時行っております。

正常圧水頭症外来(月曜日午後・木曜日午後)

水頭症とは?

 
脳脊髄領域には、脳脊髄以外にもともと無色透明の脳脊髄液が存在しています。特発性正常圧水頭症は、高齢になり脳脊髄液が過剰になっていく病態で、歩行障害・排尿障害・認知障害が起きてきます。
ガイドラインによると有病率は0.23.7%といわれており、1%としても磯子区の65才以上の高齢者が4.6万人であることから400500人の方がこの病気に悩まされていることになります。一方、年間の新たな罹患率は10万人に対し120人といわれていますが、その数%~10%未満しか病院に受診していないことがわかっております。
また、成人の水頭症には、これ以外にくも膜下出血や髄膜炎に合併する続発性水頭症があります。
 

正常圧水頭症の3主徴候 -歩行障害・認知障害・排尿障害-

 

iNPH.jpウェブサイトより引用
 
3主徴といってもすべての症状が同時に発生するというわけではありません。
多くは高齢になって脚がおぼつかなくなりトイレが近くなるといった症状からはじまり、意欲が低下していきます。年のせいだと片付けているうちに進行し、転倒するようになります。病院に相談する頃にはすでに転倒が原因で頭部を打撲したことがあること、大腿骨頚部骨折など骨折歴があることがしばしばです。
 歩行障害 
 
一歩が小さい、いわゆる”  小刻み歩行” や、足を上げづらくなる”  すり足” のような歩き方が特徴で、足を広げて歩く(開脚歩行)ようになります。また  ふらつき がありバランスが保てず、転びやすくなります。悪化すると、最初の一歩が出しにくくなる”すくみ足”がおき、立っている姿勢(立位)も保てなくなり、介助が必要な車いす生活になっていってしまいます。
 

iNPH.jpウェブサイトより引用
 認知障害 
 
物忘れや認知障害が起きてくるのも特発性正常圧水頭症の病状の一つですが、活動的だった人が何もしなくなる意欲低下、自発性低下から始まります。徐々に進行するとは限らず急速に進行することがあります。また、アルツハイマー型認知症など他の認知症疾患が併存していることもあるので早めの診断、治療が重要となります。
 

iNPH.jpウェブサイトより引用
 排尿障害 
 
初期の排尿障害は、トイレの回数が多くなる(頻尿)、トイレに行きたいなと思ったらすぐにいかないと間に合わない(切迫尿意)などが特徴で放っておくと尿漏れや失禁に進んでいってしまいます。
 

iNPH.jpウェブサイトより引用

特発性正常圧水頭症の診断 -画像診断と髄液排除試験タップテスト

 
診断は上記の  3 徴候が存在し、頭部  MRI   CT で特発性正常圧水頭症に合致する特徴的な所見(  DESH 所見といい脳室拡大、頭頂葉高位の脳溝狭小化など  ) を呈する場合はその疑いが強く、治療による症状の改善の可能性があります。その場合、さらに病状を詳しく評価する目的もかねて髄液排除試験を行います。これは、実際に腰椎を穿刺して脳脊髄液を約  30ml 排除し、その前後で歩行機能、認知機能、前頭葉機能などを評価し、改善がみられるかを精査する試験です。改善がみられれば治療による症状の改善がより期待できるという事を意味します。
 

iNPH.jpウェブサイトより引用

水頭症に対する治療 -シャント手術と術後の継続的診察-

 
治療方法でよく聞かれるのは、「薬で治せませんか?」ということですが、実効性のある治療は手術以外にありません。シャント手術という体内に埋め込むカテーテルチューブで過剰な脳脊髄液を主に腹腔に導く手術が行われています。
 

iNPH.jpウェブサイトより引用
 
当科の第 1 選択は直接脳にカテーテルを刺さずにできる 『腰椎―腹腔髄液短絡術 (LPシャント術)』 です。この手術は、脳にカテーテルチューブを通さないので脳をさわらずにできる低侵襲で高齢者に負担の少ない方法です。術前に脊椎  MRI を行い頸椎から腰椎に脊柱管狭窄があるなど  LP シャントが適切でない場合については 『脳室腹腔シャント術(VPシャント術)』 を選択します。 『脳室心房シャント(VAシャント術)』 は、直接静脈にカテーテルチューブを挿入する手技で治療効果が期待できる反面、血管内、特に心臓近傍の静脈内にカテーテルチューブを留置する必要があるので、当院では腹腔が開腹術後の癒着などでカテーテルチューブの挿入が困難な時のみ実施します。
適切な診断のもとに施行されたシャント手術の術後改善率は比較的良好です。しかし、症状が進み介助量が多くなっていても治療で元にもどるということはありません。筆者が行った調査でも早期の診断と治療がその後の経過を左右します。
 
術後はシャントの効果が十分に得られるよう、シャント圧の調整を行いつつ、症状の改善度の評価を行います。手術入院は約  2 週間です。ただし、重症度により術後も自立度が低く在宅での生活が困難と思われる場合は、引き続き回復期リハビリ病棟でリハビリを継続し在宅復帰を目指します。
 

合併症の少ない手術を目指して

 
当院が第一選択にしている腰椎―腹腔髄液短絡術 (LPシャント術)は、脳を穿刺しない点で重篤な後遺症につながる合併症が生じにくいのが特徴ですが、カテーテルチューブを腰椎の狭い間隙を通して、脊髄腔内に蛇行屈曲なく適切な位置に設置しなければいけない点で決して簡単な手技ではありません。そのためシャント機能不全(きちんと髄液が排出されない)、坐骨神経痛などの合併症が生じることがあります。特にLPシャント手術後の坐骨神経痛(一般には3%)が発生すると痛みで体を動かすのがつらくなるので再手術が必要になることがあります。
この点において当科は、安全かつ有効なシャント術が遂行されるよう綿密なプランを立て、かつ術中カテーテル撮影などを行うことで合併症のない治療を目指しております。ちなみに、2022年4月から2023年3月に行った水頭症手術(LPシャント、VPシャント合わせ22件)で合併症が生じたケースはなく、当院担当医の2023年3月現在の最新の連続120件のLPシャント術では施術に伴う永続的坐骨神経痛が生じている患者様は一人もおりません。
 
はじめに記しましたとおり、この病気を発症した方々の多くが、診断にたどりつかないまま『年のせい』であきらめてしまっていると考えられ、私共はこういった地域のご高齢の方たちにもう一度元気な日常を取り戻してもらいたいと願っております。
そのため患者様が安心して治療をうけられるよう、水頭症の診療を進めてまいりたいと考えております。